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『知らない』室市雅則


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 帰宅すると母は父のところに行っているらしく無人であった。
 『お疲れ様。焼きそばが冷蔵庫にあります』と母のメモが残されていた。
 レンジで温め、食べると普段よりも美味い気がした。
 その後、自室に入って寝転び、天井を眺めた。
 自分には何ができるのだろう。
 社会復帰ができるだろうか。
 不安ばかりが頭をよぎる。
 それはそうかもしれない。およそ三年間、外の世界に一切触れることがなく、自分の内に閉じこもっていたのだから、『おはようございます』さえも喉に引っかかるかもしれない。
 しかし、今が踏ん張りどころという奮起が彼を支え、ネットを開いて、こちらでも求人登録をすることにした。

 久しぶりにメールを開くと山のようにメールが届いていた。
 どれも宣伝とか迷惑の類であった。
 一気に消してしまおうと思ったが、マウスを握る手が止まった。
 件名に『大賞ご受賞決定のお知らせ』とあった。
 柳田には心当たりがあった。
 数ヶ月前、『短編小説募集。賞金は百万円』というネット広告を見つけた。内容を確認すると『未来をテーマに一万文字以内』が条件が課せられたた短編小説のコンテストが公募されていた。
 未来が見えない自分に未来を書くことができるか甚だ疑問であったが、見えないからこその現在であれば書けるかもしれないと勢いに任せて一気に書き上げて応募した。
 メールには、それが大賞に選ばれ、一度会いたいということが書かれていた。
 時間だけは有り余っているので、半信半疑ながらもいつでも時間は取れる旨を返信するとすぐに返事があり、明日、先方の事務所で会うことになった。
 全く実感が湧かないが、帰宅した母親に伝えると、母親もよく分かっていないが『おめでとう』と声をかけてくれた。

 三年ぶりにスーツを着た。
 当時よりも痩せたせいか、ズボンが緩くなっていた。
 そして、コンテストの担当者と会った。 
 雑談に始まり、色々な話があったが、柳田は大賞を受賞し、賞金の百万円を受け取ることになった。
 しかも、その会社は人を驚かせるのが好きなのか、その場で百万円をポンと手渡した。
 スリにでも遭ったらとビクビクしながら柳田はカバンを抱きしめながら帰ることにした。

 その途中、百万円を抱きながら柳田は思い立った。

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