○○へ
お誕生日おめでとう。
今日はどんな日でしたか。幸せな一日を過ごせましたか?
あなたが家を出てから、何度も連絡しようと思いましたが、
必死で頑張っているあなたの姿を想像すると、信じて見守る時期なのかなと思って控えていました。
でも今日ぐらいはいいよね。今日はあなたが生まれてきたくれた、大切な日だから。あんなに小さかったあなたが、自立して立派に働いていると思うと、
涙が出るほど嬉しいです。でも、無理はしないでね。あなたは小さい頃から真面目で、頑張りすぎちゃうとこがあるから。そして、辛い時はいつでも家族を頼ってください。お母さんもお父さんもあなたの味方です。それだけは忘れないでね。
P、Sたまには帰ってきてね。あなたの好きな料理を作って待ってるから。
涙が溢れて止まらなかった。母の言葉は、驚く程私の心を温め、癒してくれた。
体の水分が全てなくなる程泣き続け、そのまま眠りについた。
次の日、自分でも驚いたが、ためらうことなく仕事へ行く準備をしている私がいた。
あれから1年が経った。「1年目はひたすら耐えるのよ」「とにかく1年は続けなさい」就職が決まったと大学の先輩に報告すると、そう言われたことを思い出す。今になって先輩がなぜこんなことを行ったのかがよく理解できる。実はあの母からのメールが来て以来、連絡が来ることも、こちらから連絡することもなかった。あの状態で、母に連絡をすると絶対に甘えてしまう。母には、笑顔になるような前向きな報告をしたかったのだ。
その晩、実家から荷物が届いた。なんだろう?そう思いながら箱を開けると、実家の畑で採れたであろうたくさんの野菜と一緒に、殺虫剤ーが入っていた。どうしてこんなものが?不思議に思いながら取り出すと、底に手紙が入っていた。
元気にしていますか?
しっかり栄養を取って無理しない程度にがんばってね。
P、S そっちは都会だから虫もあまりいないのかな?
最後の文を読んで幼い頃の思い出が蘇った。