香子は、おはぎを口に突っ込みながら答えた。
職場に戻ったら、笹本さんに「おくずかけ」を教えてあげよう。利用者さんたちと、お盆の話しをして、色々な地方のお盆の話しを比べてみるのも面白いかも…あ、お土産の笹かま忘れないようにしなくちゃ…香子がそんなことを考えていると、母がおくずかけのおかわりを持ってきた。
「次はイチジクの甘露煮に挑戦するからさ、その頃にまた帰ってきたら。イチジクって、花と実と同時に花が咲くんでしょ?」
母の言葉に思わず香子はふき出した。
「イチジクに花は咲かないよ!実の中に花があるの!」
母は目を丸くしていたが、イチジクの花に驚いたのか、私の笑い声に驚いたのか…それは分からなかった。分からなかったけど、どちらでもいい。今度帰って来たときには、母が変わった理由を尋ねてみよう。あの時はごめんなさい…いや、ありがとうかな。言えるかもしれない。イチジクの花が咲く頃に…また。