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『ローズ・ハッカ・ジンジャー』柿沼雅美


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 大丈夫ですよ、ここ変えても全体の数字に影響はないので、と返し、じゃあやっておきます、と受け取ると、よろしく、と言って係長は去って行った。しゃべりを止めて、チラチラと愛未がこちらを気にしているのが分かった。
「係長っていつも自分に都合のいいような資料作らせません?」
 それは同感、と思いながらも、どうかなぁと返す。
「美樹さんいっつも作り直してるじゃないですかぁ、自分がもともと作ったものじゃないのに」
「仕事だからねぇ」
「やだぁ、美樹さんやっぱり、おっとなー! 大人の対応ですねぇ」
 お前も十分大人なんだからやりましょうかくらい言えよ、と内心思いながら、そうでもないよ、と言った。
「でも美樹さん仕事終わったら家でゆっくりできますもんね。実家なんでしたっけ? 建て替えたばかりで広そうですよねぇ、お金持ちのおうちって感じしますもーん」
「そんなことはないんだけどね」
「ぜったいそうですって。でも美樹さん、35歳で実家暮らしで、彼氏なし、仕事も事務だし、これからどうするんですかぁ? あ、彼氏はいたんでしたっけ?」
 もうその、どうするんですかぁ〜ってやつ今週何回目だよ、と思いながら、どうしようかねぇ、と笑ってみせた。
「高齢出産でもなんとかなるのってほんと芸能人くらいですよぉ」
 私は、ははは、と干涸びた声で返した。
「あ、もう3時になる、お迎え行かなくちゃー。じゃあ美樹さん、あと2時間半頑張って仕事してくださいね、あんまり悩まず、ね、仕事仕事っ」
 るんるんした口調で言い、愛未はノートパソコンを閉じた。もう何分も前から特に何のプログラムも開いてなかったんだろう、と思う。
 やめようやめようと思いながら、愛未が帰ったあとで脳内で愛未の言葉がループ再生され、これからどうするんですかぁ? という声がこだまする。どうもしねぇよ、と何度も心の中でつぶやきながら、キーボードを打つ音が少し大きくなっていった。

 定時で帰ってやるわと思って、時計の針とともに足元に置いていたバッグを引き寄せると、後ろで部長が近づいてくる気配を感じた。
「おつかれさんー、あ、今日は定時帰り?」
「あ、会議お疲れさまでした。そうですね、今日はちょっと」
ちょっと、のあとに何を言おうかと迷う。ちょっとこのあとの予定も特にない。
「あぁあぁいいよいいよ構わないから。おつかれさん。女性社員のボスなんだから、他の女性社員に少し仕事まわしてもいいと俺は思ってるからさ」

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