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『息子の見解』黒藪千代


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 妻の実家の前に車を止めると、次男の健の声が聞こえた。
「おぉ、健!元気だったか?」
「元気だよぉ、昨日の朝会ったじゃん。」
「あぁ、そうだった」
「お母さ~ん、お父さん来たよ~」
 無邪気に叫びながら家の中へ入っていく健の後ろ姿を見ていたら、妻のシルエットが視界に入って来た。
「あら~康介さん、さっ上がって」
 お義母さんが玄関先で手招きすると同時に、妻は無言で踵を返し健の手を取って引っ込んで行った。やっぱり怒っている。
 頭の中が真っ白になった。

 

 久しぶりに飲み相手が来たとはしゃぐお義父さんと酒を酌み交わし、子供達とたわむれた。妻とは一言も会話を交わさないままあっとゆう間に夕方になっていた。
「こんばんは~」
「あらっ、あの声は亮だね」
 お義母さんが嬉しそうに玄関まで出迎える。
「腹減った~」
 居間に入って来た亮は、ほんの一瞬チラリとオレに視線を向けた。オレはその視線をしっかり受け取ってから、意を決して妻を見た。
 だけど、妻は亮を見て一瞬で顔をほころばせいそいそと台所へと入ってしまった。
「お父さん花火やろう!もう暗くなったからいいでしょ~」
 またもや話すきっかけを掴めなかったと落胆するオレの顔に健と沙耶が花火の袋をバシバシとぶつける。
「わかった、わかった。じゃ庭に出よう」

 キャッキャっとはしゃぐ子供達とひとしきり花火を楽しんでいたら、いつの間にか気持ちが和んだ。ふと家の中を振り返ると、台所から麦茶をお盆に載せて出てきた妻と目が合った。
「康介さん、一休みして」
 台所の奥からお義母さんが言うと、妻はほんの少し微笑んでお盆を掲げた。
 妻が笑顔でオレを見ている。久しぶりの笑顔が無償に嬉しかった。

「康介さん、お風呂湧きましたよ。」
 縁側に腰掛けて妻が運んできてくれた麦茶を飲んでいると、お義母さんに後ろから声を掛けられた。
「あっ、はい。ありがとうございます」
(お風呂かぁ~)有難いけど、お義母さんの沸かす風呂はいつも熱すぎてオレは苦手だった。出来ればシャワーだけで良かったのにと思いながらもせっかくの好意に嫌な顔も出来ず取り敢えずの笑顔で答えた。
「お母さんアレ入れてくれた?クールの?」

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