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『息子の見解』黒藪千代


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 両親の離婚を経験したオレが、人並みに恋をして結婚という道を選んだ。
 やがて子供が産まれ生活は子供中心になった。愛妻弁当もいつの間にか消滅し、子供と同じメニューのオムライスで晩酌する事も当たり前になった。
 それでも家族旅行や季節ごとのイベントでは子供の成長を妻と一緒に喜んだ。
 3人の子供に恵まれ家族を持ってから、自分は両親とは違うと思えて何処かほっとしていた。絶対に離婚などしないという自信さえあった。だけど、いつからそうなったのか。気がついたらあの頃の両親と同じように会話がなくなり、一緒に食卓を囲まなくなっていた。

 こんなはずじゃなかったと思うと、気持ちがムズムズと焦って何とかしなければ!と思う。思いながら(離婚)の文字が脳裏に浮かんでしまう。

 
「やった!今日はオムライス!」
 リビングに香ばしいケチャップの匂いが充満していて思わずキッチンを覗き込む僕に母さんはちょっとドヤ顔をして言った。
「今日のは上手く出来たわよ~」
 鼻の頭に薄らと汗をにじませて食卓にオムライスを運ぶ母さんは何だかとても上機嫌だ。それもそのはず、オムライスの日はお父さんが遅くなる日。家族の間では暗黙の了解だった。
 何時だったか、お父さんが(オムライスでビールかぁ・・)と言ったからだ。それ以来お父さんがいる夕飯にオムライスは出て来なくなった。
 最近の母さんは、お父さんがいない時の方が機嫌がいい。伸び伸びしている。母さんの機嫌がいいのは僕達兄妹にとっても嬉しい事だ。
 だから、オムライスは嬉しいけどお父さんのいないこの現状がいい事なのかは疑問だ。
「明日からチビ達連れてしばらくおばあちゃんちに行ってもいいかな?亮は部活があるから一緒には行けないでしょ?」
 食事の後片付けが終わるといつものように氷たっぷりのアイスコーヒーを入れた母さんが僕に言った。
「うん、いいけど・・お父さんとケンカした?」
 ずっと気になっていた。最近両親があまり会話をしていない事を。
「しないわよ!ろくに話してもいないんだからっ!」
 吐き捨てるように言った後、ちょっとだけ寂しい顔をしてアイスコーヒーをグビグビと飲んだ。
「夏休みだから!チビ達もおばあちゃんに会いたいでしょ!パートもしばらく休ませてもらえる事になったからさ」
 今度は言い訳をするように早口になる。
(わかった)と言った僕に、母さんは冷蔵庫の中に作り置きした料理のタッパをテーブルに並べて幾つもの言い訳を僕に喋り始めた。
 僕は(お父さん知ってるの?)と聞こうとして止めた。

 「ただいま」

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