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『画期的な発明』拓斗


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「赤じゃないの?」
 と聞いた私に、
「赤にもいろいろあるだろう。梅重は花のような明るい赤だろう。いい匂いがしそうだろう。きっとよいことがあるんだ」
 と言っていたのだ。美しい日本語が大好きなおじいちゃんだった。
 ずいぶんと久しぶりに見たなあ。
 電車に揺られながらただみつめていると子供の頃をどんどん思い出す。
 今は都会暮らしだけれど、小学生の途中まではのどかな田舎で育った。近くに祖父母がいて、私はよくおじいちゃんと遊んだ。家の裏の田んぼや畑は季節ごとに姿を変えて、春はあぜ道に咲くたんぽぽやシロツメクサを摘み、おたまじゃくしをとり、夏はセミを手で捕まえて、秋は稲刈りの手伝い、冬の楽しみはかまくらだった。その景色ごとに匂いがあり、どれも印象深い思い出だ。様々な景色を思い浮かべながら、無邪気に何かに夢中になれるってすごいことだったんだなと少しだけ大人になった私は思った。
 それから、祖父母が亡くなって都会に引っ越してきたときの、あのざわざわした風の匂いは強烈な記憶として残っている。そんな日々の中で梅重色の空を見た時は心が穏やかになったな。今思うと、幸せな香りがしていたのかもしれない。
 あの日と今は少し似ている。
 よいことあるかなあ。 
 空はぐっと深い色になり私はますます目が離せなくなった。
「なんか吸い込まれそう」

 そう呟いた途端目が覚めた。寝てしまっていたようだ。
 親子もいない。
「あれ? 夢?」
 私はまた首をかしげながらも、帰りにドラッグストアに寄ってみることにした。

「ない」と思わず声が出てしまった。朝、母が私にかけた消臭スプレーも、さっき電車の中で会った親子が持っていたスプレーもない。
 人気商品で売り切れとか? 新製品だからまだ入荷してないのかな。
 店員に聞いてみることにした。
「あの、画期的な発明の、新製品ておいてありますか?」
「新製品?」

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