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『イヤミのシェー』司真


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 元日は、おせち料理とお雑煮とアルコールと正月用のテレビ番組で、それらしい気分を楽しめたが、二日には早くも飽きはじめていた。
 朝、雑煮を食べたあと、私は居間のこたつに横になり、ぼんやりとテレビを眺めていた。
 トイレに立ったとき、ダイニングのテーブルで妹の夫が、ヘッドフォンで何か聴きながら、本を見てぼそぼそしゃべっていた。私の視線に気づき、ヘッドフォンをはずしながら、
「会社からトイックを受けるように言われてまして」
 と弁解するように言った。
 こたつに戻って、うとうとしていると、外へ遊びに出かけていた妹の子供達が帰ってきて、駅前のショッピングセンターへ行きたい、と言い出した。新聞のチラシに、昼からアニメのキャラクターの着ぐるみショーをやるとあったらしい。
「あとで」
 と逃げていた妹の夫も、子供達があまりにうるさくせがむので、こたつの私に、「ちょっと行ってきます」と残して、一緒に出かけていった。
 私は何となく目が覚めてしまった。湯のみが空だったので台所へ行くと、ダイニングのテーブルに、英語の教材が置かれたままだった。書店のブックカバーのしてある本の中表紙を見ると「二十日間で英語が聴き取れる」とあった。何気なくめくっていると、あるページで目が止まった。「十五日目」とある章で、タイトルが「アイ・ハブ・ア・ドリーム」だった。マーチンルーサーキング牧師の有名な演説を教材にしていた。その章は、演説の一部と公民権運動の歴史を簡単に説明する文章で構成されていた。
「アイ、ハブ、ア、ドリーム」
 私は声に出してみた。自分の声ではないようだった。誰にも聞かれていなかったか思わず辺りを見回してしまった。
 少しして母と妻と妹が帰ってきた。福袋を買いに、やはり駅前のショッピングセンターへ行っていたらしい。子供達が一緒だとやっかいなのでそっと出かけたのだ。
 居間で品評会が始まった。
 福袋を開けながら妹が、明日帰るから、と言った。
 妻がちらっと私を見た。私は、
「うん、俺達もだな」
 と言って母に視線をやった。
 母はただ黙って福袋を開けていた。
 その夜私は、ちょっと見たいと思っていたテレビの深夜番組まで、居間のこたつで本を読んでいた。妻は隣の部屋で寝ていた。母は自分の部屋へ、遊び疲れた子供たちと妹夫婦は別室へ引っ込んでいた。
 足音がした。
「まだ、寝ないの、隆文」

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