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『カタノハネ』大澤匡平


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 どこにでもいる電車好きの男の子にも、いずれは平均値の反抗期と思春期はやって来て、どこでも生まれる親子列伝みたいのを話すのだと、疑わなかった。
 なのに、目にうつる背中は微塵の愛すらない生物。
 それでも、それでもと思い、僕は。10分くらい遅れてもいい、よね?だなんて、その場しのぎの過去を求めるも、ダメ、帰るよ。とあっさり破かれた。
 ソウタの手を包むように持った千鶴は、光太、帰ろう。と過去に足をつけた。

 元のおもちゃ屋までの間、寄り道を許されコンビニへ。
 ソウタに好きなものを買うことを提案し、カードのついたラムネや、実験菓子とか、はたまた高めのアイスを勧めるも首は横に動くだけ。
 千鶴に見守るよう諭され、しばし興味のない北欧家具の雑誌を見ていると背をソウタにつつかれた。
 彼の手には、葡萄ゼリー1つ。
 偶然探しは虚しくなることを僕らに思い出させる。

 おもちゃ屋に戻ったソウタは、別れの言葉もいわずに見えなくなった。
 僅かに重なる光太の影に、またね。と僕らは呟き、3年ほど前から車に置いていた練炭やら固い紐を捨てた。
 勝手な子守りに疲れ、休憩所に寝込むように座り合う千鶴と僕。

 久しぶりに肩に乗る千鶴の頭からは相変わらずの石けんの匂いがした。
 千鶴はそのまま、晩ご飯は昨日の残りで良いよね。だなんて貧しい現実を刺して小笑った。

 戻ればきっと、忙しなく勿体ない暮らしが両手を広げて哀れな夫婦を待っているのだろうけど。
 隣の人に、私は不幸だ。と言える限りは此処にいたい。そう思えるのは、いつまでか。

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