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『無謀なパン屋計画』神村友


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「…え。は、はい。ご注文誠にありがとうございます!」
 目を覚ました母がこちらを見ている。
「お月様みたいなパンって作れるかしら。孫が明日誕生日なのだけれど、大きくてふわふわの甘いお月様のパンが食べたいっていうのよね。昨日、色んなパン屋さんに行って見て回ったのに、どれも違うっていうの。」
「かしこまりました。大きくて、ふわふわで、甘いお月様みたいなパンですね。」
 気づくと、母は隣に座って電話口に耳をすませている。
「ごめんなさいね、無理な注文で。あの子、自分の顔くらいの大きさのふわふわのパンにかぶりつきたいみたいでね。値段はおいくらかしら。」
「お客さまのご希望の値段相当に作りますので。」
「そうしたら、プレゼントだからね、3000円くらいでお願いできるかしら。お月様パンひとつね。」
「かしこまりました。ちなみにアレルギーはございますか。」
「そうそう大事なことを伝え忘れていた。あの子、小麦粉アレルギーなの。だからなかなかお店に置いてなくてね、困っていたのよね。そしたら、いつも行くパン屋さんで「あなただけのパン、作ります」っていうチラシを見てね。」
 いつも行くパン屋さんでチラシってどういうことだろうと思いながら、私は名前、住所、電話番号、お届け希望時間などを確認し、電話は終了した。

「初注文だ。」
「きたね。」
 母と顔を見合わせ、はしゃいだ。早速ふたりで内容を整理して、準備に取り掛かった。
「小麦粉は使えないから、米粉ね。クリームは練乳と…」母はブツブツと呟きながら、パンのレシピを考えていた。私はそのレシピを見て材料を購入する。
 私が材料を買いに出掛けようとしたとき、
「優。ついでに図書館で、月の写真とかが載っている図鑑を借りてきて。」と台所から母の声が聞こえてきた。
「え、そこまでするの。」と私が驚いていると、
「だって、その子が見ている月はきっと、私たちみたいな多少なりとも偏見を持つ大人が見る月よりもありのままの月を見ているはずよ。だから、月についてありのままの情報を知って、それを上手く表現したいの。」
 妥協せず、極めようとする母がすごいと思った。正直、割に合う仕事なのかどうかわからないが、母のためにも自分のためにも絶対成功させたいと思った。

 私たちが慌ただしく準備をしているとき、父が帰ってきた。

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