「今行くー」
俺を忘れずに呼んでくれるマイコに少し嬉しくなって、でも、あまりニヤけ過ぎないように注意して笑顔を返す。これがうちの家族ですと、去年亡くなった父さんと母さんに報告したくなった。
「おはよー!マイコちゃんも今日早いね!あ、マイコちゃんゴムブレスしてる!可愛い~!!それ、この間買ってた虫除けのやつ?」
林間学校当日、かなり早めに体育館に着いて座って待っていると、私よりも少し後からキリちゃんがやってくる。まだほとんど誰も来てない体育館の中に、キリちゃんの声がちょっとだけ響いた。
私の虫除けリングにいち早く気付いたキリちゃんは、少し太めの可愛いラバーバンドを二つ着けていた。
「うん、キリちゃんと会った時に買ってもらったやつ~。キリちゃんのラバーバンドも虫除けグッズだよね?可愛い~!!」
「私もマイコちゃんと会った時にママに買ってもらったやつだよー」
笑顔で私の横に座るキリちゃんは、私と同じジャージ姿なのにずっとずっと可愛かった。虫除けリングが外しアイテムみたいになってて、何となく私よりもキリちゃんの方がオシャレに見える。キリちゃんは可愛いしセンスよくていいなぁ…。
「今日泊まるところって虫多そうだよね?これだけで持たなかった時用にってママにスプレーも持たされたんだけどー…やっぱ、使うとダサいかな?」
「大丈夫だよ!私も一応スプレーも持ってきてるし!他の人が持ってなくても、虫が多かったら一緒に使お!」
微妙に笑って鞄からこっそり虫除けスプレーを見せるキリちゃんに、私も急いで鞄の底に入れていたスプレーを見せると、キリちゃんはほっとした顔をした。こんなに可愛いキリちゃんでも、不安になることがあるみたいで、ちょっと親近感。
「そうしよっか!よかった~、マイコちゃんも持ってきてて~」
よかったって笑うキリちゃんを見ていたら、家に帰ったら一番最初にお母さんにありがとうと言おうって思えた。