その夜。
缶ビールを飲みながら、そっと寝室をのぞいてみた。
大の字になって眠る聡太。その傍らには、聡太を寝付かせているうちにうっかり寝入ってしまった絵理がいる。
ばしん。ばしん。
寝室におかれた飼育ケースの中では、四匹のバッタが跳ねてばしん、ばしんと音を立てていた。
餌のキュウリが、しおれかけている。
「絵理。毎日、おまえばかりに世話を任せて、悪かったな」
俺はキュウリを切ってから、飼育ケースを手に取った。
俺が手伝えば、絵理の苦労も少しは減るに違いない。
――これからは俺も手伝うよ。
絵理の寝顔に微笑みかけて、俺は飼育ケースの小窓を開けた。
そしてバッタにまた逃げられた。