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『バッタが逃げた。』越智屋ノマ


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 さっきまで泣いていた聡太は、いまや狩人と化していた。
「パパ! いた、あそこだ」
 えっ、どこ? 
 虫取りあみを握って挙動不審になる俺とは対照的に、聡太は冷静そのものだ。
「おだいどこだよ」
 息子の指は、冷蔵庫の前のビニール袋を指していた。袋の中から覗く緑色の束は、冷蔵庫に入れ損なって放置されている万能ネギ。バッタめ、見事な擬態じゃねえか。
「聡太、おまえ目が良いな」
「あのシューってやるの使ってみようかパパ! ゴキブリ捕まえるシューっていうの」
「捕まるけど、死んじゃうからダメだ」
 今回は生け捕りせねばならんのだ。
「ぅらぁぁぁあああ!」
 俺は万能ネギめがけて網を振り下ろしたが、逃げられてしまった。バタバタバタバターー……ちくしょう、元気にバタつきやがる。
「もう! うるさくすると、逃げちゃうんだよ」
「ご、ごめんな」
 羽ばたいたバッタは、台所の白い壁タイルに止まった。野原では完全迷彩のバッタも、白地の上では目立つばかりだ。
「今度はぼくがやる」
 聡太はバッタの背後から、そろり……そろりと近寄って。
 ふい。
 素手で軽やかにバッタをつまんだ。
「ほら! とったよパパ見てみて!!」
 すっかり野外の昆虫採集のテンションになって大喜びしている。
 そんなに力強く握って「バッタがくたばった」になっちまわないかと思ったが、取り越し苦労だったらしい。聡太は手慣れた様子で飼育ケースに一匹目を納めた。
「わーい。かわいいねぇ、足がトゲトゲってしてるよねぇ」
「くつろぐなよ、まだあと2匹いるんだから」
「そっか。(きょろきょろ) あ! テレビの端っこにいる!」
「えっ、まじ!?」  
 そんな調子で俺たちは、家じゅう派手に散らかしながら、一匹ずつ地道に回収していった。
 そして。
 なぜか一匹増えた。

   * *

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