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『灰に溶ける』斎藤俊介


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どこにいても、例え日本を離れたとしても、ふと、父とのことを思い出し続けるのだろうと。
忘れようと思っても父のことは忘れられない。それが辛いと同時に嬉しいことでもあると感じると。
「だから大丈夫よ。今は心の底からこの家でこれからも暮らしたいと思っているの」
母は穏やかな笑顔でそう言った。強がってる様子も私に気を遣っている様子でも無いようだった。
根拠は無い。本当に何となくそう思ったのだ。母の優しさと強さを感じたせいだろうか?
翌日の夜に私は自分の部屋に帰ってきた。風呂に入り、一服しようと煙草に火をつけた時、慎二から電話が掛かってきた。
無事に帰れたか?という内容の電話だった。
しばらく雑談をしていたが、私は気になっていた実家での事を聞いてみた。
「なんであの時、みんな笑っていたの? 」
実家で私が灰皿を取りに行こうと、立ち上がった時に何故かみんな笑っていた。
いくら考えてもその理由がわからなかった。
「あー、あれね。お前煙草の銘柄変えただろ?今吸ってる煙草、気付いて無いだろうけど、親父さんが吸っていたのと同じなんだよ」
慎二は、父に反発して実家をでた私が父と同じ銘柄の煙草を吸っていることに気付き、やっぱり親子は似るものなんだなと
思わず笑ってしまったのだと言う。他のみんなも慎二より遅れてその事に気付き笑ってしまったのだろうとのことだ。
「まあ、そういうわけだ。そろそろ切るな。おやすみ」
「あっ……ああ。おやすみ」
私は驚いていた。偶然、父と同じ銘柄の煙草を息子も知らずに吸っていた。確かにほっこりするようなエピソードだが、驚いたのはそこではない。
思い出したのだ。父はいつも夕食前と夕食後に煙草を吸っていた。
夕食の時間丁度位に吸い終わるように逆算して煙草に火を点けていた
様に思う。
夕食後には熱いお茶を一口飲み、煙草に火を点け、うまそうに吸っていたのだ。まるで、このために生きている。とゆうような表情をしていた。
何故父と同じ煙草を吸っていた事実を知っただけなのに、このような事を思い出したのだろうか?理由はわからない。
だが、確かに私は思い出したのだ。今の今まで忘れていたのに、鮮明に、当時の雰囲気、匂いまで頭の中で再現されているようだ。

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