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『灰に溶ける』斎藤俊介


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母が言っていたことを思い出す。家の中、外でもふとしたことで父の事を思い出してしまうだろうと。それが辛くもあり、嬉しいことでもあると。
私も多分、母と同じ体験をしたのだろう。あれだけぼやけていた父の人物像が、今ではしっかり把握できている気がするのだ。
母の言っていた通りだった。確かにこれは辛くもあり、嬉しくもある。涙が溢れそうになる。
もしかしたら、この世界は誰かの色々な思い出が今この瞬間にも溶けているのかもしれない。
嬉しいことも辛いことも、ふとした瞬間に、他愛もない事で、世界の一部を拾い上げるように鮮明に思い出すのだ。
辛く、悲しいことを並べて、悲劇の主人公になる必要も、嬉しく、楽しい事を指折り数えて、無理に前向きになる必要もない。
ただ、自然に、あるがままの感情に従い。笑い、涙を流せば良いのだ。
今さらそんなことを……と思うが、そんなことを私は今まで何処かに置き忘れてきたように思う。
煙草の灰に私の時間を溶かして、後で取り出すことは出来ないが、もしかたら、この煙草を吸うことで、
この世界のどこかに溶けている、父との思い出を拾い上げる切っ掛けになるかもしれない。
早速、もう一つ思い出した。父は愛用のライターがあった。古いZIPPOであちこちに錆があったように思う。
今度帰省したら、探してみよう。そして母に譲ってくれないか?と頼んでみよう。
譲ってくれるだろうか?
煙草がもう無くなってしまったようだ。
仕方がない、コンビニまで買いに行くか。
いつもより軽い足取りで、晴れやかな気持ちで、
コンビニまでの道のりを楽しめる気がした。

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