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『ひとつ屋根の下だからこそ』広瀬厚氏


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 どうにか食事が済んだ後も仁は由美に尻を叩かれ叩かれ身支度をし、一番に玄関を出た。次に由希奈が自転車に乗って高校へ向かった。それじゃあ行ってくる、と妻に言って祐二も仕事に出かけた。朝一番からずっと休む暇なく忙しくしている由美は、ちょっとひと息ついてから化粧をし、
「それじゃあ、お母さん留守お願いね」と由利恵に声をかけ、パートへ向かった。久々に顔を見せた太陽は、朝から気温をぐんぐん上昇させていき、大変暑い一日となった。

 汗だくになって仁が小学校から帰ってきた。家には扇風機を回し、祖母がひとり待っている。
「仁ちゃんお帰りなさい。暑かったでしょ、ちゃんと水分いっぱいとった? 熱中症で倒れちゃあたいへんだからね」
「おばあちゃん、クーラーつけてないの。暑いよ、クーラーつけていいかなあ? 」
「そうね、クーラーつけましょうかね」
 普段家では電気代を気にして、よほど暑くないかぎり、由美がクーラーのスイッチを入れることを許さなかった。
「お母さん帰ってきてクーラーついてたら怒らないかなあ?」
「大丈夫よ、こんなに暑いんだもの。もし怒ってもおばあちゃんがつけたって言えばいいから。そうそう、冷蔵庫にアイスがあるから食べなさい」
 仁が祖母に甘え、クーラーの効いた居間のソファーに寝そべってマンガを読んでいるところに、由美がパートから帰ってきた。玄関が開いて、ただいま、と言う母親の声に仁は一瞬どきりとしたが、祖母が自分の味方だと思い心丈夫になり、構わずそのままだらだらとマンガを読み続けた。
「ちょっと何よ、寒いぐらいにクーラー効かせて。電気代かかるんだから、もうっ!」居間に入った途端由美は、前腕を交差させ両手のひらで肩の下の辺りを、寒そうにさすりさすり、クーラーに目線を向け、しかめっ面をして言った。するとすぐに仁が返す。
「知らないよ僕、おばあちゃんがつけたんだもん。だよね、おばあちゃん?」
「そうよ。今日はほんと暑いからね、クーラーでもつけなきゃ熱中症になっちゃうわ」仁と向かいのソファーに腰掛け、縫物をしている由利恵が、そう返事した。
「まあクーラーはいいとして… でも、設定温度少し上げるわよ。ところで仁! 宿題はすんだの?」
「まだだよ」
「宿題もしないで、そんなごろごろとマンガ読んで! お母さん! なんべんも言ってるけど、お母さん仁を甘やかしすぎよ」
「由美、あなたのほうこそ怒りすぎじゃないの」
「わたしが怒らなかったら誰が怒るって言うのよ? 祐二さんもなんだかんだ言ってこの子に甘いし、わたしだって好きで怒ってるわけじゃないわよ! だいたい怒らせるようなことするから悪いのよ!」
「ああ怖い怖い、わが娘ながら怖い怖い。そんな怖い娘に育てたつもりなかったんだけどねえ。お父さんも天国で怖い怖いって言ってるわよ。もっと楽しくいきましょうよ楽しく」
「なによそのふざけた言いかた! お母さんだって昔はよくわたしに怒ったじゃない。きっとわたしお母さんに似たのよ。もう嫌んなっちゃうわ」
「えっ、わたしに似たって? ちょっとなによ!」

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