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『プログラミングパパの提案』中杉誠志


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 リン子は感情的に叫びながら、『地団駄踏む』という語句を辞書で調べたときに、その項目の解説として載っている通りの動作をした。
 これじゃ埒があかないので、私が割って入る。
「どうしたのよ、リン子。誰がエサやったっていいじゃない」
「そうですそうです、いってやってください、ママ」
 私の背中に隠れながら、夫が煽る。いや、煽るな、夫。
「よくないよ! パパがエサやるから、C太がパパにばっかなつくんだもん!」
 夫を振り返ると、素知らぬ顔で口笛を吹いている。……こいつ、おとなげねえ。
 しかし、猫のエサ『和味 鯛のうま煮風味 1歳以上のグルメな室内猫用』も、トイレ用の砂『猫砂楽園 植物だから』も夫の稼ぎで買っているものだ。私から夫にやめろとは、口が裂けてもいえない。それで、ごく常識的な提案をしてみた。
「……じゃあ、日によってどっちがエサやるか決めたら?」
「なら、今日からずっとあたしがエサやる! パパは半年に一回だけ!」
「いえ、それは不公平です。ここは公平に、乱数を生成して、エサやり係を決めるくじを作りましょう。偶数が出たときはパパが、奇数が出たときはリン子さんがエサ係です。いいですね?」
「……普通に一日交替じゃダメなの?」
 という私にしては論理的な意見を、ふたりは完全に無視。
「いいけど、くじ作ったら、ちゃんとコード見せてよ」
「ええ、もちろん」
 したり顔でそういうと、夫はスマホをいじって、即席でくじを作った、らしい。スマホってそんな使い方できたんだ……とあっけにとられる私の目の前で、夫は娘にスマホを手渡した。娘は画面を覗き込む。なんなんだ、こいつらのやりとり。これが、未来か……。
 と、五秒ぐらい画面を見つめていたリン子が、まゆをひそめた。
「待って。ここ、おかしくない? 乱数で表示される数の後ろに、*2って付いてんだけど」
「ええ。なにか問題ですか?」
 飄々とした顔で応じる夫に、娘は激昂した。
「おかしいよ! 自然数二倍にしたら、結局全部偶数になるじゃん! パパの卑怯者!」
 なにがなんだかよくわからないが、とにかく夫は不正をし、それで娘は不機嫌らしい。しかたがないから、また私が割って入る。
「ね、ねえ、リン子、落ち着いて。ママにはよくわからないけど……そんなことより、夏目漱石や森鴎外について話さない? それならママにもわかるし」
「うるっさい、文系! 黙って作者の気持ちでも考えてろ!」
 シュン……。

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