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『チーム・エール』藤亘音


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 一時間後、食卓の皿が空になる。三人は手を合わせた。
「ごちそうさまでした」
 カズナが真っ先に席を立つ。すぐに戻ってきた。ルーズリーフを一枚持っていた。
「あのさ、三週間後の日曜、クラブの試合があって、それにオレ出ることになったんだ。で、父さんと母さんに見に来てほしいんだけどその前にちょっとお願いがあってさ」
「何なの、応援ならもちろん行くわよ、そんなに先なら予定なんてたぶんきっと大丈夫よ。お父さんもそうでしょ?」
「まあ、仕事だけはわからないからなあ」
「そ・こ・で」
 とルーズリーフを両親の前に置く。いちばん上の欄には「父さん」「母さん」「カズナ」、いちばん下の欄に日付と試合という文字が大きく赤い文字で書かれていた。
「左側に明日から毎日の日付書いといた。みんなの予定をそれぞれ把握しとけば、オレも集中して試合に望める、ような気がする」
「どういう意味?」
「最近クラブで知ったんだ。目的を達成するための方法。つまり、今回の場合は試合を見に来てもらうのが目的なんだけど」
「方法って?」
 カズナは両親をまっすぐ見た。
「周りをよく見て、相手が行動する前に自分の行動を考えて、相手によく自分の考えを伝える」
 二人は頷いた。
 カズナは続ける。
「目的を達成するためには、どうしたらいいんだろうって考えたんだ」
 ルーズリーフに視線を落とす。
「父さんも母さんも仕事が忙しくていろいろ最近忘れっぽいじゃん。何だか家の中も少し散らかってるしさ。でも父さんも母さんも仕事してるからってそのことで不満を言ったことない。それって今働くことに充実してるってことだろ」
 再び視線を両親に戻す。
「仕事の迷惑になりたくない。でも試合には見に来てほしい。だから、みんなの予定の情報をひとつに集めて試合にがんばれるような態勢を作りたいんだ」
 ちょっと照れ笑いする。
「ま、強気なこと言ったけど、初めてのことだし、失敗してもいいんだったら一度試してみたい。どうかな、お願いします、協力してください」
 へえ、二人はまじまじと息子を見つめた。母がボールペンを持ってくる。
「お母さんの明日の予定」
 “9時歯医者、午後スーパー、郵便局に寄る”と書き入れる。ペンを父親に渡す。
「オレは明日は本社で、一日空いて、三日間出張。とりあえず土曜の夜は帰る」
 カズナが気付いて大きな声を出した。

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