昼休みのチャイムが鳴ると同時に中間報告が発表された。
飴野のドブ板戦は真里亜の空中戦を圧倒、帰りのホームルームを待たずして勝利を収める、はずだった。
「全校生徒の皆さん、教室のテレビを点けてください」
スピーカーから真里亜の声が流れると、誰かがテレビが点ける。すると、阿部が撮影した動画が映し出される。
ビラがクシャクシャに丸められ、窓外に放り投げられた。この後、校庭に設置されたゴミ箱に入る。それから、鶏が羽をバタつかせる。飴野とジンはそう記憶している。
ところが飴野がビラを放り投げた次の瞬間、カメラアングルが切り替わった。教室から校庭を映していたカメラが、今度は校庭から教室を映している。
教室から降ってきたビラがゴミ箱を大きく外れる。
エサと勘違いした鶏がビラを喉に詰まらせ、もがき苦しむ。
動画はスローモーションになり、おどろおどろしいBGMが足され、繰り返し流された。
捏造だ、と飴野は叫ぼうとした。
スピーカーの音割れなどお構いなしの真里亜が、飴野を遮る。
「皆はこの動画を見て何も感じない!? 飴野はゴミをポイ捨てして動物虐待をする奴だよ!? そんな奴に賛成できるの!? ねえ!? ねえって!」
飴野のクラスのみならず、両隣の教室、果ては学校中からブーイングが聞こえてきた。
例の鶏は今、校長の食道を通り抜けて胃袋の中。明朝にはセボンを置いたトイレに流されることだろう。
数十本もの釘が打たれたバットを持って、長嶋が飴野の前に立ちはだかる。数時間前まで健全なスポーツを行うために存在していたバットは、すわ凶器に様変わりして、飴野の鼻先で鈍い光を発している。
「お前のような野郎の味方をしたら、母ちゃんとワンちゃんとチョーさんに顔向けできねえ。俺はツルツルに反対だ」
飴野はすっかり消沈、愛想笑いを浮かべて受け入れる他なかった。すでにツルツルだから無意味な反対をするな、などと反論できるはずもない。
凹亭は飴野を呼び出す。「ボコテイ」ではなく「オウテイ」と呼ぶ飴野に以前から腹を立てていたので、これをキッカケにツルツルに反対することにした。
凹亭の手に武器がないかどうかを見極め、飴野は反論する。