――パシャ!
――パシャ!
「そろそろ、ママも座ってお祝いしよう」
「うん。今、ケーキ切るね」
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今日は、夢桜が一人で歩けるようになって初めてのお散歩だ。
パパの両親が贈ってくれた小さな靴を夢桜に履かせていると、パパがじっとこちらを見ているのに気がついた。
「どうしたの?いっしょに、お散歩行く?」
なんとなく、一緒に行きたそうな顔に見えたので、そう声をかけてみた。
「行くのって、そこの公園だろ?」
「そうだよ」
「あそこの公園、小さい子供連れのママさんばっかりだろ?俺がのこのこ付いていったら、男俺一人で、なんか浮いちゃうんじゃないかと思ってさ……」
「え!?何それ。そんなこと気にしてたんだ。誰もそんなの気にしないよ」
「うーん、そうかなー」
「もー、そんな、つまんないこと考えてるぐらいなら、行きましょ!天気だって良いんだから。
そうだ、パパがいっしょに来てくれたら夢桜の写真もゆっくり撮れるから、行きましょ。夢桜の手放すとあぶないから、今日は写真、諦めてたのよ。丁度いいわ」
「そうかぁ?」
出かけに、そんなどうでもいいような、やりとりをしていたが、外に出てみると春のうららかな陽気に相応しい快晴だった。
どこまでも澄み渡った青い空。濃い紺色と、透明感のある青がところどころにグラーデーションを作って広がっている。春の風に流されたのか、雲はどこにも見えない。春のさらりとした空気が気持ちいい。
「ね。来てよかったでしょ?」
「そうだな。散歩するには最高の日だな」
夢桜とパパと私、三人で来たのは、うちの近所にある公園だった。
この公園は、元々神社の境内だったところを開放して作られたらしい。
そのせいなのか、敷地はそれほど広くはないが、公園の隅に、とても大きな一本の桜の木が立っていた。樹齢を重ねた歴史ある桜らしく、太い幹のまわりには高さ七、八十センチくらいの柵が設けられていて、桜の木には直接触れられないようになっている。
その枝ぶりも、四方に広がりみごとなものだ。広がった枝の先には満開の花びらが咲き誇っている。
公園内でのお花見は禁止されているが、今日は最高のお花見日和だった。
「すごいね、ここの桜」
桜の幹のすぐ近くまで来て、三人で上を見上げながらパパに話しかけた。
「ほんとだな。今日が一番のピークじゃないかな。来週になったら少し花が散っているだろうし」
「ここで写真撮りたい。夢桜を降ろして後ろから支えていてくれる?」
「ああ、いいよ」
そう言いながら、パパは抱いていた夢桜を降ろして立たせ、背中の後ろへ回り込んだ。
夢桜もやっと一人で立てるようにはなったが、まだおぼつかない。後ろから支えて上げないとすぐに倒れてしまいそうな感じで、少しふらついている。
私は、そんな二人から離れて、カメラを構えて位置取りをした。