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『麻子さんのつづき』あねのほるん


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「おじいちゃんの、お姉さん」
いつ頭上から蜘蛛や埃が落ちてくるかと気にはなるが、私も視線はお兄ちゃんと同じようにあちこち動いている。
 生まれてこの方都会の社宅マンションにしか住んだことのない私たちに、平屋の一軒家は豪邸に見えた。古いけれど。極力無駄なく作られた間取りに慣れた目に、長い廊下の左右にドアや襖がたくさん並んでいる様子はダンジョンのように映った。やっぱりちょっと汚いけれど。
「じゃあ、俺たちにとって、大叔母さんか?」
「そうなるね。会ったことないけど」
 おじいちゃんの話によると、かなり若いうちに亡くなったらしい。独身で、子どもも居なかったとか。
「とりあえず、どこに何の部屋があるかまず確認しよう。燈子、荷物が来るのは明日の何時だっけ?」
「二時頃かな。だから今日中に、せめて荷物を入れる部屋と寝る部屋はきれいにしておかないと」
 荷物と言っても、一般的な量に比べれば随分少ないと思う。
今回の引っ越しで初めて家族が別れるので、今ある家具類のどれをどちらが持って行くか相談会議を開いたが、殆どのものは率先してお父さんに譲った。赴任先で同じようなものが手に入るかどうか判らなかったし、私もお兄ちゃんも「ないならないで困らない」という人種だからだ。荷物を取りに来た引っ越し屋さんが「え、お子さんの荷物これだけですか」と段ボール量の差に唖然としていた。
「父さんが持っていけなかった家電はこっちに来るんじゃなかったっけ? 冷蔵庫とか、洗濯機とか」
「ああそっか。じゃあその置き場も。あとお兄ちゃん、素手であちこち触らないで。ほらマスクと軍手」
 予想ほどの汚れ方はしていないが、やはり掃除は必須だ。ダンジョンの冒険は早めに切り上げねば後が辛くなる。
 一通りの部屋の位置をチェックしたあとで、お兄ちゃんが言った。
「燈子。これ、随分と面白い家だぞ」
「そうなの?」
 面白い、という言葉が「変わってる」とか「一般的でない」という風に聞こえた。私は築百年超えの家の普通を知らない。
「ほら、こっちの奥の部屋。ここに勝手口があるだろう?」
案内されるままドアから覗くと、確かにがらんと何もない部屋の隅に、内土間のついた勝手口がある。 
「コンセントもこの部屋だけやたらと多いし、壁紙も部分的に新しい。それにこの出窓は、昔から台所によく作られたものとそっくりだ」
「でもキッチンは向こうにあったよ?」

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