母さんが呼んでいるが構うものか。僕は急いで部屋に入った。
そして、サンタさんに向けて手紙を書く。優しい両親を願ったことへの謝罪と、元の両親を返して欲しいことを書き連ねた。
書き終えて、ベッドに入る。
サンタさんは寝ている間にプレゼントを運んでくる。だから、僕が眠らないと両親は戻ってこないのだ。
一刻でも早く戻って欲しい僕は眠りについたのだった。
「眠ったようだな」
ドアを少し開けて様子を伺っていたが、寝たようなので部屋に入る。
何を書いていたのだろうか、と机に置かれた手紙を読んでみる。慌てて書いたのだろう。字が拙く、誤字脱字もひどい。しかも、ところどころ字が滲んでいる。これは……涙の跡か。
「中山さん? コウスケ君の様子はどうでしたか?」
私の代わりをしてくれていた加藤さんが、心配そうに覗き込む。
「ただ眠っているだけですよ」
コウスケを起こさないように小さな声で伝えてから、部屋を出る。
加藤さんと共にリビングに行くと、妻と妻の代わりをしてくれていた佐伯さんが座っていた。
私たちが入ってくるのを見た妻が口を開く。
「コウスケはどうでした?」
「眠っている。それと後悔しているようだった。机の上に、私たちを返して欲しいってサンタさんに手紙を書いていたぞ」
「ようやくですか。このまま新しい両親がいいと思い続けるのではないかと心配していたんですけど。よかったわ」
「それなら、それで構わん」
「また、そんなことを言って。本当は寂しがっていたんですよ」
妻が佐伯さんに微笑みかける。
「我が子は可愛いものですから、お気持ちはわかります」
佐伯さんも微笑を浮かべる。
本当のことだから何も言い返せん。だからといって、妻の言葉を肯定するのも気恥ずかしい。
考えた末、加藤さんに新しい話題を振ることにした。
「いやぁ。しかし、世の中にはいろいろな仕事があるものですな。まさか、私たちの代わりをしてくれる仕事があるとは思いもしませんでしたよ」
「まぁ、本来の家族代行サービスは息子さんや娘さんが何らかの理由で父親や母親に会えないという時に利用してもらうサービスなんです。だから、こういう依頼は初めてで。満足していただけたかどうか」
「大満足ですよ」