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『ピレパラ』柿沼雅美


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 1人目の男性は、まだ30歳という年齢で、大手通信会社に努めている人だった。なんでこの人が婚活会場に、という感じで、とても女性に困っているようには見えなかったが、話をしているうちに、周りの友人が30を前に結婚していって焦っているということだった。仕事をしていること以外に特にアピール部分はなく、相手も年上の私には興味を示していないようで、最後の5分間は、梅雨なのに雨が少ないですねぇなどとどうでもいい話で時間をやり過ごした。
 2人目の男性は43歳で、45歳までに結婚がしたく、もちろん結婚を前提におつきあいがしたい、とやわらかに話してくれた。仕事も部長クラスで全く問題はないが、この人と自分が並んで歩いているイメージが全くなく、ただ相手の話を聞いて、へへへ、ですねぇ、そうですねぇ、と言っているうちに時間が終わってしまった。
 3人目の男性は40歳ということだったが、事前の指摘通り、職種は? だの、一人暮らしですか? などと聞いてきていて、あぁこの人は逆に事前のアドバイスでそういう質問をして相手の価値観を測るように言われたんじゃないかと疑うほどの質問の多さだったので、ただ、一人暮らしではないです、お弁当はつくっています、夕飯は家族の分もつくります、と私も言われた通りの返事をした。
 4人目の男は、天野彰一と言った。年収が少し平均より少ないのがいつも気にされると優しく笑いながら、37歳で実家暮らしで、母親が早くに亡くなっているので父親を一人で住まわせるのも気が引けて、と話す。ふと、嫁姑問題はないんだなぁ、と頭に浮かび、そんなことを考えた自分が不思議になる。
 私が家族と同居していると言っても一瞬も嫌な表情をしない。背は170㎝くらいで中肉中背、普通としか言いようがないが、シャツの袖のボタンの色がひとつずつ違っていたり、取り出したハンカチのステッチが、おしゃれだ。
 2時間と少ししたところで全員の男性と話し終え、司会とアドバイザーの夫人たちがカードを配っていった。また話したくなった相手、外で会ってみたいと思った男性の番号を記入するようにということだった。
 私は、天野彰一の番号を書き、夫人に手渡した。番号合わせのために休憩時間が与えられ、飲み物スペースで水を飲んだ。美樹と恵美が近づいてきて、美樹が耳元で、ごめん今日はずれだわ、と言った。恵美は、友達になれそうな人はけっこういた、と微笑んでいた。
 司会者が、参加者をまた呼び、男女が向き合うように1列になって立たされた。見事にマッチングした男女の名前が呼ばれ、呼ばれた人たちはお互いに本当に照れて並んで立ったり、よかったんだろうかという気持ちが顔に現れながら立ったりさまざまだった。
 6組目というところで、私の名前が呼ばれた。
 自分の名前が呼ばれたことがよく分からず、そのままその場にいると、すっごーいよかったねぇーと美樹が私を前へ押した。恵美は少し驚いている様子、で心配そうに私に顔を向けていた。

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