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『ピレパラ』柿沼雅美


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「あら、そう。そうねぇ、まずね、ひとつ覚えておいていただきたいのはね、殿方は若い方も立派に年を重ねられた方も、自立した女性が好みということなのね」
 はぁ、と夫人の顔をうかがいながら答える。
「たとえば会話の中で、自分のお給料が少ないから安心して生活したい、養ってほしいとういうのは絶対おやめになってね」
「あ・・・はい」
「それと、あなたお住まいは?」
「都内、です」
「そうじゃなくって、お一人暮らし?」
「あ・・・いえ、家族と」
「あら、ご家族と同居されていらっしゃるのね」
 そう言いながら夫人は予約時の私のプロフィール用紙に目をやる。
「あなた失礼だけどもう35歳でしょう? それでご家族と同居というのはとてもマイナスになりかねないの。お分かりになる?」
 はぁ、とうなづく。
「あなた、お昼ご飯はどうされているの? 職場でのランチは外食?」
「そ、そうですね、一人で食べに出ることが多いです」
「だめ、だーめよあなたそのお答えじゃ」
 は? と顔に出さないようにして夫人を見る。
「あなたねぇ、もし普段のお食事の話題になったときには、お昼ごはんはお弁当がメイン、夕食は自炊、とお答えなさい」
「え、あ、はい」
「お弁当は親がでなく、自分で作る、という情報もつけなさいね。夕食はご家族の分も作ることが多いですね、とお答えすれば、印象がぐっと上がるのよ。あぁあなたみたいな方と家族になれたら落ち着くだろうなぁと思わせるのが大事なの」
 はぁ、と私はゆっくり頷く。
 そろそろお時間です、という司会らしき方の声がし、夫人は、じゃあまたね、と言って去って行った。
 私たちはぞろぞろと部屋から出、同じフロアの別の部屋に入った。
 そこには私たちよりも少し多い人数の男性が整列された男性が立っていた。司会の人によると、部屋に等間隔に整列し置かれている椅子に女性が座り、その正面の椅子に男性が座り、10分の会話時間が与えられるというものだった。10分たつと男性は隣の女性の正面の椅子にズレるように移動し、また10分の会話をする、というものだった。
 自分の話したい男性とゆっくり話せるわけではないとはじめて分かった私は、すでに帰りたい気持ちが強く、しかし帰るわけにもいかず、指定された椅子に座った。

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