私が聞くと、仕事だってー残念だよねーと美樹が言う。つづけて、そこのビルだよーと目的地を指差した。
ビルの入り口にはいくつもの会社名とレンタルスペース会議室、イベントスペース、と表記されている。
「今日のはさ、成功率90%のアドバイス付き婚活パーティーだから期待できるよ」
嬉しそうに言う美樹に、なんの成功率よ、と恵美がツッコんだ。
「アドバイス付き?」
そう言う私に、美樹が慣れた感じで説明をしながらエレベータのボタンを押した。
「うん、そうなのそうなの。個々に話し方とかアドバイスもらえて、これは言っちゃいけない、とか事前に教えてもらってから望めるんだよ。いい男の人いっぱい来てるといいなぁ」
「美樹最近目が厳しいからなぁ。私は別に友達ができればいいかなって感じなんだけど」
「えー恵美だって良い出逢いがあったらいいでしょ? でも今回は参加費男性ちょっと高めだからちゃんとした人多いと思うよ」
二人のやりとりを聞きながら、私は、へぇと相槌をうった。
自動ドアをくぐると、白を貴重とした受付があり、大企業の受付嬢とは少し違う、ベテランの風格のある女性が綺麗なお辞儀で迎えてくれた。美樹が恵美と私の名前も告げ、案内されるまま部屋に入ると、すでに10人程度の女性が椅子に座って主催の人らしきおばさんたちからアドバイスを受けている様子が見えた。
私たちは案内されるまま別々の椅子に少し離れて座らされた。美樹は、小さく手を振り、じゃあガンバだね、と楽しそうに囁いた。恵美は、少し呆れながらも椅子に座り、私に小さく手を振った。
私が座ると、すぐに一人の女性が丸椅子を持って少し斜め前に座った。
「はじめまして。短い時間ですが、アドバイザーとしてお話うかがいます」
そう言うおばさんは40歳後半という見た目で、白いセットアップスーツを着て、髪をきれいにまとめていた。綺麗だが化粧が濃く威圧感があった。
「あ、はじめまして、柏木由香と申します」
「よろしくお願いしますねー。あなた、パーティーははじめて?」
どこかの外国の夫人のような口調で言われ、少し笑いそうになるのを堪えた。
「はい。はじめてで」
「緊張なさらないでね。今日はとても有望な殿方がいらっしゃるから」
殿方!? と心の中でぶっ飛びながら、うへへ、と笑顔を作った。
「お仕事は何をしていらっしゃるの?」
「事務です、かね」
「そう。失礼だけど、総合職でいらっしゃる?」
「いえ、あの、派遣とか、ですが」