6月期優秀作品
『ピレパラ』柿沼雅美
「もう大学卒業して12、3?年たつねぇ〜、うちら超仲よかったんだねぇ〜」
へへへ、と笑う美樹と恵美と紗英を見て、だねぇ〜と私も笑う。
「由香は? 仕事は? 募集あるし正社員いけるんじゃない?」
美樹が梅酒ロックにちびっと口をつけて上目遣いをする。リキッドアイラインの太さが少し時代遅れな感じがする。
「正社員、うーん、でもなんかずっと派遣かバイトだし、今更って」
「真面目に続いてるのって美樹くらいだよね。私も転職2回してるし」
恵美が指についたフライドポテトの油を舐めて美樹を見る。たしかにー、と紗英がポテトを見ながら言う。
「恵美も紗英も転職して偉いじゃん。紗英はフリーランスだし。うらやましいよー。私さぁ、言ったかもしれないけど、出張の多い今の会社の人と結婚してヨーロッパに連れてってもらうために入社したのにさー、あ、パリねパリ」
美樹はドラマの1コマのように、女優みたいな表情をつくって話す。
「したのにさー、いい男いなかったってね」
紗英が突っ込むと、まじそれな、と美樹が言い、そうそれな、と恵美が続けて笑った。
「いそうだけどなぁ〜。少なくとも私のまわりよりははるかにちゃんとした人いそうだよー」
私が言うと、由香のイメージイメージ、と美樹が顔の前で手をぶんぶん振った。
「恵美はたぶん、もういないんじゃないって分かると思う」
そう言う美樹に、恵美が頷く。
「紗英と由香にもちらっとメッセージしたかもしれないけどさ、先月にね、美樹に誘われて合コン行ったの。美樹の会社の後輩? だっけ?」
「そうー、後輩くんと広告会社の人ね、あっち4人と、私と恵美と会社の後輩女子ちゃんと先輩と」
あー言ってたねぇ、と紗英と声を合わせた。
「その広告会社のヤツが超失礼でさー!」
美樹が声を大にすると、思い出したように恵美が、だったねだったねと含み笑いをする。
「普通に楽しくしゃべってたのに、急に、その年で実家暮らしで独身てどうなんすか? とか言うのヒドくない!?」
「うわぁ言われちゃったのかぁ」
紗英が苦そうな顔をした。
「紗英は一人暮らし長いし偉いと思うけど、正直わざわざ一人暮らしする必要性感じなくない?」
「美樹は実家がお金持ちだもん、そりゃそうだよ。私は普通にお金問題で出て行けないって感じなのにさ、なんかそういうこと言われて一気に冷めたんだよねー。かっこいいなぁとは思ってたんだけどあれば無理」
そう言う恵美に、マジ無理あれは無理、と美樹が繰り返す。
「次までに合コンあったら誘うからさー紗英と由香も行こうよー」