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『タンスのにおい』藤雅みづき


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 それだけでテンションが上がるのだから、なんて単純でお手軽なんだと自分でも思う。
(そう言えば、セーラー服って、腕伸ばしにくいって聞いたっけ)
 一段高い位置に置かれているおばあちゃんの骨が入っている骨壺と、その前に置かれた遺影を見て思う。おばあちゃんの時代はそれしかなかったのかもしれないけれど、ソースがついた時はどうやって洗ってたんだろう。
「そういや、あれだ。仏壇はどうするんだ?」
 お父さんの兄の一言で、その場に緊張が走る。
 この空気感には覚えがある。
 クラスで学級委員や体育祭でのクラス対抗リレーの走者を決める時の教室と同じだ。
 これまで学級委員やリレー走者に選ばれずにすんだ時のことを思い出し、できるだけ目立たないように自然に背中を丸めて、発言者と目を合わすことがないように、目の前にある料理をじっと見つめる。あくまでも自然にというのがポイントで、これを間違ってしまうと逆に指名される恐れがある。
 真っ白だと思っていたお皿はよく見ると、縁に白いレースに似た模様が描かれていて「いい仕事してますね」とお馴染みのフレーズが頭に浮かぶ。
「言うとくが、わしのところは無理じゃ。何せ、マンションやからのう」
「それを言えば、うちだってそうだ。仏壇を置ける場所もないし、そもそも運んでもらうにしてもここから隣県までは遠すぎる」
 そう発言したのはお父さんの兄と弟、私からすれば叔父にあたる人だ。
 たしかにおばあちゃんの住んでいた家はぼろぼろで住む人もいないため、取り壊すことにしようと叔父とお父さんが日取りなどについて話しているのは知っていた。
 だけど私は昔からこの二人が苦手だ。はっきりと聞いたことはないけど、お母さんも私と同じことを二人に対して思っているようだった。
 その理由は……。
「お前のところならいいだろう。一軒家だし」
「それがいい。運んでもらうのもすぐだからな」
 案の定、二人の矛先が向いたのはお父さんだった。
 たしかに私の家は一軒家だけど、うちだって決して広くはない。
 だけど、この家はお父さんが頑張って働いて、ようやく手に入れた小さな城なのだと。
 お母さんから聞かされたことがあるし、たとえ広くなくても、私は今の家が好きだった。
 頑張ってお父さんが手にした家に、お母さんと私で考えて選んだ家具。中でもリビングに置かれているソファは私が選んだもので、お母さん達にも好評で私も気に入っている。

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