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『ガーディアン』十六夜博士


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「俺が手塩にかけた野菜に、知らぬ間に取り付きやがって」
 俺はそんな独り言を言いながら、いつもより憎々しげなアブラムシをやっつけていく。小まめにチェックしている成果だと思うが、アブラムシは1割程度の苗にしか見つからなかった。大事には至っていないことが、何か誇らしかった。
――俺がいる限り、害虫に好きにはさせない。
 そう、この俺は、中井家の守り人、ガーディアンなのだ。

 次の月曜日の終業後、俺は行きつけの時計屋に向かった。少し確認したいことがあったからだ。
 その時計屋は、商店街の大通りから脇にそれた、やや寂しげな小道沿いにひっそりとある。入口の上に掲げられた佐藤時計店という看板と、ショーウィンドウに並べられた時計から、そこが時計店を営んでいることがわかる。だが、縁故、あるいは特別の理由がない限り、この時計店の客になる気はしない佇まいだ。俺は、後者の理由から、この時計店のお世話になっている。
 店の扉を開けて入ると、奥のレジ横で作業をしていた老主人が顔を上げた。焦点が定まらないのか、ちょっとの間、俺のことを見つめると、「ああっ、中井さん、いらっしゃい」と声をあげた。
「ご無沙汰していますね。今日はちょっと、確認したいことがあって」
「ほぅ、何ですかな?」
 老主人は興味深そうな顔をした。
「いや、時計の防虫効果について……」

 この時計店に来る特別の理由。それは、『防虫時計』だ。防虫と言っても、本当の虫ではない。愛娘に近づいてくる、男という害虫を防ぐためのものだ。
 華が大学に入学したとき、俺は、何か記念になるものを送りたかった。長く実用として役に立ち、俺が死んだら形見にもなるようなもの……
――時計だ、と俺は思った。
 どんな時計が良いか、ネットで調べているうちに、偶然、この佐藤時計店に関する書き込みを見つけた。
 そこには、「愛娘に、男(害虫)を寄り付かなくしてくれる、奇跡の防虫時計!」というシンプルな書き込みと、佐藤時計店のGoogleマップへのリンクが貼ってあった。
――男を寄せ付けない防虫時計?
 俺は、全く信じられなかったが、女子校育ちの華が、総合大学に入ったらどうなるかを想像してみた。華は、我が子ながら、清楚で、優しく、最近、父親の俺でもドキッとするように綺麗になっていた。
自分の大学時代を思いだす……
 俺は寒気がしてきた。あの年頃の男子の中には、女子を隙あらば狙う、狼のような奴が山のように存在した。自分だって、狼でなかったなどとは言い切れない。度重なる合コン。彼女欲しさに、夜を彷徨してたじゃないか……
――華が危ない!

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