「ああ、浩介。この度はご愁傷様」と洋介は振り向き様に恭しく言った。
「ありがとう、洋介。わざわざ親父の通夜に来てくれて……」
「いや、なぁに……」
「どうしてなんだ?」
「は?」
「どうして通夜に来てくれたんだ? そこまでの付き合いはない筈だ」
洋介は最初、俺の言った意味が分からず驚いていた。だが直ぐ納得したように、そしてはにかんだ笑顔をした。
「いや、まあ……お礼も兼ねて。小学校時代、世話になったから」
「世話になった?」
「お前は知らないくて当たり前か。色々と聞かれたり相談したりと、親父さんとは色々と話してたんだ」
「そうなのか……」
「俺だけじゃない。今さっきいた麻美も、知美もそうだ。同世代には多いんじゃないかな? 親父さんに相談に乗ってもらった奴って」
洋介は小恥ずかしい様に頭を掻き俯いて話を続けていた。
「相談と言っても、子供のたわいもない話を聞いてただけだろうだが。周囲には親父さんの事を気味悪がったりしてた奴もいたけど……でも、親身になって話を聞いてくれる大人なんて他に居なかった」
「そうか……そうなんだ」
「お前の事もよく聞かれたよ」
「えっ?」
「恥ずかしかったのかな、自分の息子なのに。学校での事や、どんな遊びや話をしたとか。とにかくお前の色んな事を話した。……思っている以上に親父さん、お前の事を知っていたよ」
俺はその洋介の話に、はにかんだ笑みで無言で頷くしかなかった。
「……なあ浩介。知美が居なくなった事件、覚えてるか?」
「ん? ああ、よく覚えてる」
「親父さんに秘密基地の場所をバラしたの、俺なんだ」
「そうか」
「……落ち着いたら、また連絡するよ。じゃあ」
そう言って洋介は祭儀場を出て行った。
式場に戻ると俺はまた娘を膝の上へと座らせ、弔問客への挨拶を再開していた。
訪れる人々を見れば、見るからに若い連中が多い。
また肘の上でつまらなそうにしている娘。