ブックショートでは、原作ごとに優秀作品を紹介していきます。
今回は、『不思議の国のアリス』特集。2015年度は5作品が優秀作に選ばれました。
白いうさぎを追いかけたアリスは、不思議の国に迷い込み……。
自分の容姿を醜いとは思っていませんが、やはり美しいとも思っていない私に、アリスなんて名前は荷が重すぎるのです。たしかに最近は、もっと『強烈』な名前があると聞きますし、それに比べれば普通なのかもしれませんが……。
私はただ「アリス」について書こうとしただけだった。でも今はそうしようとしたことを後悔している…右を見ても左を見てもホールはどこまでも続いて、先の方は針の先のように小さく暗くなってどうなっているのか分からない。
本当に不思議の国に行けたのは、アリスだけだった。テレビに映る遠い記憶の中の名前。一介のマイナーバンドから、時代を席捲する天才プロデューサーへとのし上がった男 日下直也。宇佐見はかつて彼と一緒にバンドを組んでいた。
「藤堂ありすです。」とみんなの前で自己紹介したあの日。親の都合で中二の二学期から転校した私は、新しいクラスにとってゼロの存在だった。むしろ名前負けの平々凡々な容姿からすると、マイナススタートだったかもしれない。
楽しみにしていた初めての運動会に病気のせいで参加できなくなった亜利子。悔しい、悲しい。そんな彼女の部屋の壁からウサギが現れた。そう、今夜は十五夜。夜空の向こうに行ける特別な日。