祐介がブティックの入口に近づくと華がちょうど出てきたが、彼の姿を捉えるや否や反対方向へ駆け出した。祐介は全速力で追いかけ、彼女の指輪のない左手をつかんだ。振り向いた彼女の顔は相変わらず魅力的であったが、目元のほくろはなかった。祐介は息を荒げながら言葉を吐いた。
「待て、って・・・なぁ、夢、叶ってんじゃないかよ。華ぁ。」
華は肩を震わせ、嗚咽しながら涙を流した。
・・・
私ね、中二の冬にトイレで聞いたのよ。真由美たちの会話を。
祐介くんに告白されたけど適当に濁してほっとくって。モテるのも大変だって笑っていたわ。私、悔しかった。悔しくて悔しくて涙が出た。私が真由美だったら祐介くんを幸せにしてあげられるのにって。
あなたがお店を開くと知ったとき、この計画を思い立ったの。あの頃のあなたの気持ちが報われてほしいって。でも途中から気づいていたのよ。私、私の気持ちを報うために真由美の仮面を被ったのね。