どこまでも誠実な様子に、雄斗は苦笑してしまう。《金取って!》とコメント欄。
『そうね、やってみようかな。どれだけできるか分からないけど。ちょっと凝ったアクセサリと、手ごろなキーホルダー、とかにすれば選べるかな? あ、値段は原価とちょっとくらいにするから!』
遠慮せず金額をつけてくれ、と思うと、《先にマージン渡しときますね》と高額のスパコメ。同様のスパコメが続く。雄斗も便乗してスパコメした。
『待ってまって。まだ決まってないって。Ntさんとかユートさんさっきも結構なスパコメくれたよね』
ハスミはスパコメの名前を読み上げながら、慌てたように、しかし楽しそうに言う。
『いや、やりますか。どんなの作るか皆と考える配信もやろう!』
コメント欄が沸く。
*
マコトは、バイトからの家路を急いでいた。大好きなライバーの周年記念配信が始まるのだ。大学生になってバイトを始め、お金の重みを実感したことで、スパコメの重みも増したように感じる。
角を曲がったところで、その先にいた人とぶつかった。
「すみません」
咄嗟に謝り、顔を上げてぎょっとする。ガタイのいい金髪の男。首からは銀のネックレス。外見で判断してはいけないが、「コワイ人」に見えた。
高校の頃にも同じようなことがあったな、と思いながら、もう一度頭を下げようとしたが、
「いや、そんな謝んなくていいよ。俺もぼうっとしてたっていうか」
男は笑って言う。そして、目を少し下に向けて、
「あ、それ」
マコトが肩から提げたバッグには、ライバーのアクリルキーホルダー。
「笹羅リンネじゃん。記念配信で急いでたわけか」
「あ、え」
「気ぃつけろよ」
すれ違いざまマコトの肩に手を置いて、男は去っていく。
その後ろ姿を眺めながら、マコトは、どこかで会ったことがある人のような気がしていた。知り合いにあんな人はいないのに。
彼のネックレスが、残像のように脳裏にちらつく。
胸元で銀色に輝いていたペンダントは、蓮の花の形をしていた。