おじいさんは、朝、家を出た時と同じように笠を持って、降り始めた雪の中をとぼとぼと家に帰ることになったのです。
途中、おじいさんはお地蔵さんたちの前を通りかかり、お地蔵さんたちが雪に埋もれそうになっていることに気付きました。
「お地蔵様方、これは大変。お寒いことでしょう」
おじいさんは、お地蔵さんたちの頭に積もっている雪を払い、持っていた笠をお地蔵さんたちにかぶせてやりました。
売り物の笠は五つしかなかったので、小さな小さ子には、自分がかぶっていた笠をかぶせて。
「どうぞ、お風邪を召しませんように」
おじいさんは、お地蔵さんたちのために、両手を合わせて祈ったのです。
雪まみれになって家に帰ったおじいさんは、おばあさんに、笠は売れず、餅も買えなかったことを詫びました。
「笠はお地蔵さんたちに差し上げてきた。雪に降られて、大層寒そうにしてらしたから」
「それは良いことをなさいました。お地蔵様たちは、私たちのように、囲炉裏の火にあたることもできませんからね。おじいさんの笠が少しでもお地蔵様たちの助けになればいいですね」
おばあさんは、おじいさんが手ぶらで帰ってきたことを責めもせず、にこにこ。おじいさんの身体が温まるよう、囲炉裏に薪をくべたのです。
その日の夜更けのことです。
おじいさんの家の近くで、どしんどしんと、続けざまにものすごい音。
おじいさんたちが、屋根に積もった雪が落ちたのかと慌てて家の外に出てみると、そこにいたのは菅笠をかぶった六体のお地蔵さん。
どしんどしんという音は、お地蔵さんたちが運んできた餅や米を、おじいさんたちの家の前に下ろした音だったのです。