小説

『レイラ~カムイコタンものがたり~』難波繁之(アイヌ民話・伝承『神居古譚 〜魔神と英雄神の激闘〜(北海道旭川市)』)

 神々たちが、イソンノアシとコタンの人たちに言いました。「レイラは自らを犠牲として、このコタンを守った。その美しい心を思って、我々神々はここに住んで、いつまでもお前たちを守ると約束しよう」そう言って、神々たちは川に、山に、木々に、動物たちにその姿を変えてこの場所に留まったのです。
 それから1年が過ぎようとしています。イソンノアシはコタンの長となり、たくさんのチェップやユクなどのカム(動物)を捕獲し、アワやヒエなどの雑穀も収穫してコタンは豊かな暮らしができるようになりました。特に、神々に守られたイ・シカラ・ペツはたくさんのチェップが獲れ、洪水もなくなり安心した生活が送れるようになったのです。
 コタンの人たちは、レイラが命と引き換えに救った場所を神々(カムイ)が住む場所(コタン)と呼び、新しい季節が訪れるたびにカムイノミの儀式をおこない、神々への感謝とレイラへの慰霊をしています。
 このカムイコタンは現在でもアイヌの人々の信仰の場所であり、慰霊の場所であります。カムイコタンの川の真ん中には、ニッネカムイの大岩があり、それを取り囲むように神々が化身した大自然があります。そこへいつも澄んだ爽やかな風(レイラ)が包んでいるのです。

1 2 3 4