確かに、汚れが落ちたゴムの部分にMとマジックで書かれていた。
ミツルはこの靴に出会った時、持ち主は女の子だと思っていた。そしてこんなに可愛い靴をはけるその子を、とてもとても羨ましく感じていた。
でも、この靴を履いていたは…。
この靴を履いていた子供はとってもとっても幸せな子だ。
ミツルは揃った小さな靴に向かって、静かにうなずいた。
穏やかな昼下がり、公園にはモモ、カナ、ミツルの三人が今日も仲良く遊んでいる。
「じゃあ次は、お姫様ごっこにしない?」
「いいねー!じゃあ私は白雪姫」
「私はエルサね!ミツル君は…」
とモモが言いかけた時、ミツルは答えた。
「僕はシンデレラがいい!」
その声は、初夏の日差しにも負けないほど強く輝いていた。
夏の香りのする風がフワリと三人を包む。
「うん!いいよ!」
モモがにっこりと答えた。
「じゃあ今夜はみんなでお城の舞踏会に行きましょうよ!」
「そうね!ほら、シンデレラも急いで準備しなくっちゃ。」
ミツルは初めて自分が緊張していた事に気づいた。体に少し脱力感を感じるが、心は晴れやかにすっきりしていた。
「シンデレラー!お花を摘みに行くわよー!」
ミツルは掌の汗をズボンに擦り付けると、モモとカナを追いかけた。
「今行くわー!」
空は青くて広い。風は爽やかで気持ちがいい。僕は王子より…お姫様になりたい。