小説

『バーテンさん、話を聞いてください。』真銅ひろし(『安珍・清姫伝説』)

「・・・女の人は怖いですから。」
「だよね・・・あのさ、一杯付き合ってくれない?」
 私の誘いに吉木君は「ありがとうございます。」と答え、自分用にワインを注いだ。
「健闘を祈ります。」
「うん。」
 グラスを合わせる。チラッと奥のカップルに目をやる。幸せそうに寄り添っている。どうあがいても私はあんな風になる事はないだろう。
「安珍と清姫ね。」
思わず口から漏れてしまった。

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