小説

『瓶に閉じ込めた話』和織(『瓶詰地獄』)

 彼は読み終えたものをテーブルに置いた。しばらくは、彼の思考は果てのない夜空に包まれていた。自分もまた、このイメージを追い続けるのだろうか?そう思った。それから、考えた。これを、どうしよう?考えながら、紙を一枚づつ瓶の中へしまう。同じ場所へ戻すか?それとも別の場所へ置く?海に投げる?でも、海ならすぐに還ってこないように、沖へ行かなくちゃいけない、と思う。誰かがこれを拾っているのを、目にしたくないからだ。それとも、燃やしてしまおうか?瓶を捨てて、紙を燃やして、そしてもう、誰にも、触れられないようにする。自分の中へ閉じ込めて、栓をしてしまう・・・・・。そこまで考えると、彼は急に、視線を感じた。もちろん、ここには彼の他に誰もいない。物理的に、自分が誰かによって見られるというのは不可能だ。そうわかっていても、彼は強く、視線を感じた。自分を見ている誰かが、確かにいる。その存在に、耳を澄ましてしまう。すると、波の音が聞こえた、それが、瓶の中から流れてくるような気がして、彼は思わず、瓶に栓をした。

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