「嘘……これは作り物じゃない。本物?」
美月は三神を睨むように見た。
「これは本物なの?」
「もちろん、これがあの伝説のイエティだと確実に言えるかどうかはわかりませんが、これまでに見たことのない生き物なのは確かだと思います」
「これはどこにいるの、教えて!」
「えっ?」
「早く教えて!」
興奮して尋ねてくる美月の迫力に三神はとまどったが、ひと呼吸置いて美月に訊き返す。
「教えたらどうするつもりです?」
「もちろん、私が探しに行くのよ。そして、見つけたらこの世紀の大発見を大々的に発表するのよ。イエティをこの屋敷に連れてくるのもいいかもしれないわ」
三神は、自分に笑顔でお礼をした子どものようなイエティとその家族や仲間と思われる巨大なイエティたちの姿を思い出した。大々的に発表なんてされてあそこの場所が知れ渡ったら、彼らも捕まってしまうかもしれない。
「そういう目的なら教えられません。イエティたちには、これからも今いる場所でひっそりと生活させてあげたいんです」
三神は真剣な表情で美月を見る。
美月も三神を見ながら、腕組みしてじっと黙っている。
「わかったわ」
少しして、美月が口を開く。
「イエティを見ても世間に発表なんてしないし、連れてくるなんてこともしないわ。これならいいでしょ? 早く場所を教えてよ」
「そう言われても、いや、その……」
三神はそう言われるとどうしたらいいかわからず、あたふたしている。
「わかった、もういいわ。教えてくれなくてもいいわ」
美月があきらめてくれたようなので、三神はほっとした。
「あなたがイエティの場所を教えてそこに連れて行ってくれるまで、ずっとあなたといっしょにいることにするわ」
「え?」
三神は美月が何を言っているのかわからなかった。
「私はあなたと結婚するわ。そして、あなたといっしょにイエティを見に、さらにそれ以外の幻の生き物を探しに行くわ!」
「は?」
「さあ、イエティの話をもっと聞かせてよ」
美月は満面の笑みを浮かべながら三神の腕を引っ張った。