それから数ヶ月のちに、六美は突然体調をくずし、息を引き取った。
「前日まで、食欲もあったのにねぇ。人の命ってわからないものね」葬儀の準備をしている時に、夕奈の母はぽろりとつぶやいた。そばにいた夕奈は、静かにうなずくしかなった。
あの夜、夕奈が聞いた祖母の過去の話は、誰にも言えない。もしかしたら、祖母は自分の死が近いと悟っていたのかも知れない。夢で起きたことか、それとも現実に起きたことだったのか、今となってはもう誰にも分からない。ただ、夕奈の胸の内に、留めておくよりほかにない。
遺影の六美は、ただ優しい笑顔を浮かべているばかりで、何かを話してくれることはもう二度とない。夕奈は祭壇に飾られた六美の遺影を静かに見つめた。祭壇にはたくさんの白い百合の花が飾られていて、まるで六美を守り続けているように見えた。