でもクロワッサン、食べたかったな……オサムは口惜しさを感じながら、ゆっくりと歩く。あの角を右に曲がってもう少し歩けば、オサムの家に辿り着く。
オサムが曲がろうとしている角の反対側から一人の男が歩いてきていた。ジャラン、ジャラン、と歩くたびに金属がぶつかりあう乾いた音と、重たい革靴のソールがアスファルトを叩く音がする。男はテンガロンハットを被っている。腰のベルトには銃が差し込まれている。まもなく角を曲がろうというところ。二人がちょうど鉢合わせする。
目の前に現れた異質な男に、オサムは驚いた。上から下まで男の姿を観察した後に、いやいやちょっと待ってよ、西部劇じゃないんだから、とオサムは嘆いた。ようやく決闘が始まろうとしていた。