どうしたらいいかわからず、茫然としながら歩いていた。
「桃ちゃん、俺にいい方法がある」
茫然としている俺の隣りで猿山がニヤリとした。何を考えているのかわからない不気味な目つきだった。
俺は相手にせずそのまま歩いた。
「俺の言う通りにすれば鬼にも勝てるぜ」
猿山のその言葉に俺は振り返った。
「あの鬼に勝てるだと?」
猿山がまたもやニヤリとして俺を見ると、俺の耳に口をあててささやいた。
「いい方法がある。……」
「何? そんなことを……」
俺は目を見開いた。猿山はすました顔をしている。
「桃ちゃん、あれだけ大口叩いたんだから、今さら村の人たちにやっぱり無理なんて言えないだろ」
そうだ、こいつの言う通りだ。今さら鬼退治はできないなんて言えるはずがない。どんな手を使ってでも、俺は鬼を倒さなくてはならない。
ここが運命の分かれ道だった。
なぜ、俺はあのときあんな奴の言う通りにしてしまったのか……
村に戻った俺は、鬼に決闘状を送った。鬼に送る前にその決闘状を村のみんなに見せた。
「俺とお前が一対一で対決すること」
「武器は使わずに素手で戦うこと」
「場所はお前の城がある鬼ヶ島でいい」
決闘状にはそう書かれていた。鬼がこんな条件に素直に従うのかと思ったが、猿山は「あの鬼はめっぽう強いが単純で馬鹿正直な奴だ。必ずこの条件を飲む」
と自信満々に言っていた。
決闘状を送って数日後に鬼から返事が来た。
「お前の言う条件で戦ってやる。一人で鬼ヶ島へ来い」
返事にはこう書かれていた。
「なんでわざわざ敵の城がある鬼ヶ島へ行くんだ」
「向こうでは何をされるかわからない。危険だ」
「村の近くで戦ったほうが安全なんじゃないか。わし達も何かの力になりたい」
村の人たちは心配してくれた。