小説

『わらしべ高校生』緑(『わらしべ長者』)

「どうなったんだ……?」
「自分の体を引き換えにしてしまった。」

 最後ホラーな話を聞いてしまい、なんだか怖くなってわらしべを終わらせたくなった。夜道を歩いていると、家の前の公園でお爺さんが倒れていた。
「大丈夫ですか!?」
 すぐに目を覚ましたが、すぐさま
「水、水。」
 といった。
 貰ったお茶を差し出した。
「ああ、生き返った。君にはこれをあげよう。」
 そうお爺さんが差し出したのは黒い大きな光る石だった。
「昨日公園で見つけたんじゃ。」
 お爺さんは何度もありがとうと言ってそのままベンチで寝てしまった。
「どうすんの。この石。」

 次の日、学校の図書室で栞さんに会った。
「麦野君、ミカから聞いたよ。優しんだね。」
 嬉しくて飛び跳ねたい気分だった。最近の僕はツイてる。ここはひとつ、勇気を出して。
「栞さん、今日暇だったら一緒にドドールでも行かない?新作飲みたくってさ。」
「麦野君もそういうとこ行くんだ。いいよ。」
 ドドールで注文を待っている間、置き引きにあった。幸いにも、栞さんの鞄は盗まれず、僕の鞄が盗まれた。あのお爺さんからもらった、あの光る石も盗まれたのだ。

 全てが終わった。

「何もかも終わったんだよ!あの石がなきゃ……」

 そう藤藁に電話をした。何を言ったところで今は戻ってくることはない、被害届を出して今は待とう、と言われた。

 放課後、無気力に図書館で突っ伏していたら、今度は栞さんがドドールに誘ってくれた。
「最近ここら辺盗難多いみたいだね。麦野君の鞄、戻ってくるといいね。」
ドトールで、僕は今までのわらしべのことを話した。盗まれたカバンに石が入っていたことで落ち込んでいることも。
「もういいよ。麦野君が願っていたことがかなったじゃない。最近の麦野君、前よりも生き生きしてるし私は好きだよ。」
「え、好き?」
「もう一人じゃないよ。」

 それから今まで通り誰にでも親切なことに変わりなく、やがて友達も増え、素敵な彼女もできたという。

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