小説

『ニキと過去の物語』持田瀞(『サンドリヨン』『灰かぶり姫』)

薄暗かった部屋は、魔法の光と色であふれていく。
「わぁ!ルークったらすごいのね!」
ニキは歓声をあげた。
「貴方が魔法使いなのだったら、こんな時間まで待ってないでさっさとシンデレラに魔法をかけて彼女を幸せにしまったら良かったのに」
「そんな都合の良い魔法は持ってないよ。そもそも魔法の存在を過去の君と君の姉に知られたら、未来が変わっちゃうだろ」
ルークは肩をすくめる。
「ちなみに今なら、君も魔法が使えるよ」
ニキが黙るとルークは彼女を指して言う。
「邪なことを考えたな?」
「考えてないわよ!」

 
「さ、シンデレラを起こそうか」
二人は意気揚々とシンデレラのそばに駆け寄った。

 
そのとき。

バターン!!
大きな音を立てて誰かが入ってきた。
慌ててニキとルークは階段の影に隠れる。
入ってきたのはサシャと過去のニキだった。

「もう。招待状を忘れるなんて、どういうこと?」
「いいから、早く早く」
二人はバタバタと音を立てながら二階へ上がっていき、すぐにまた戻ってくると階段の下で眠っているシンデレラに気がついた。

「なあに、この子。寝ちゃってる」
「仕事もしないで。叩き起してやりましょう」

それを聞いてニキはカッとなった。
やめて、そう言おうとした瞬間、頭の中にルークの声が響く。
「そんなことしたら、お前がいなくなっちゃうぞ」

私が私に会うなんてことしたら、確実に未来は変わってしまうわ。
ニキは動くことができなかった。
そのとき、横で光が瞬いた。

 
ルークだった。
目を覚ましかけたシンデレラを魔法で再び眠らせると、自分は猫の姿に戻り、思い切りサシャに噛みついた。
「キャー!!」
サシャの悲鳴が響く。ルークはそのまま過去のニキにも思い切り噛み付く。悲鳴は二重にこだました。
「フー!!」
ルークはシンデレラの前に降り立つと、背中の毛を逆立てて威嚇した。
「噛み付いたわ!なんて猫!」

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