シビル・リンチの「レット・ユアセルフ・ゴー」がフロア中に鳴り響いて、おれの脳髄を吹き飛ばす。福音。この日一番の繋ぎ。ラリー・レヴァンも真っ青なヤツ。おれはにっこりと微笑んで、わめく女も轟音マニアの群衆も意識から消し去って、ステップ、ステップ、ターン、ステップ……。
翌朝、クリーニングを頼みにフロントへ立ち寄ると、メガネをかけた係の女の子にスーツをぶん取られた。すっかり忘れてた……。
無事に戻ってきますように……。
おれは坊主頭の女に祈った。
小説
『パーマネント・パッパラパー』泉鈍（『飛行機から墜ちるまで』吉行エイスケ『オイディプース』）