小説

『とある夫婦とブランコ』鷹村仁(『夢を買う』)

「つまらなかった。」
 その声は冷静さのみだった。
「・・・ごめん。」
「だって何回も見たやつなんだもん。新ネタ作りなさいよ。」
「簡単に言うなよ。」
「そうしないと白い椿はなかなか咲かないわよ。」
 回して来た腕が強くなるのを感じた。こちらもそっと妻の後ろに手を回す。
「頑張ります。」
「当たり前です。死ぬ気でやってください。」
 二人はクスクスと笑った。
 二人のそばに白いものが落ちて来た。上を向くと細かい雪がチラチラと降って来ていた。

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