小説

『ブルーベルベット』義若ユウスケ&かいかなみ(『スーホの白い馬』)

「いいってことよ」と馬がこたえた。
「それじゃあ……」とぼくはいった。
「ダランベリー・ブルーベルベット・トワイトニックソース・パンケーキを三つ!」と花子が注文した。
「かしこまりました」といってでっぷり腹の店主は材料をもって厨房にむかった。
 ダランベリー・ブルーベルベット・トワイトニックソース・パンケーキはすぐに運ばれてきた。
 店内にパンケーキの甘い香りとダランベリーのさっぱりとした香りがひろがる。鼻腔をくすぐる北欧の森林のような香りはブルーベルベットとトワイトニックソースがまざりあって生まれた奇跡のハーモニーだろうか。ぼくはうっとりして、ため息をついた。
「さあ、めしあがれ」とでっぷり腹の店主がとびっきりの笑顔でいった。
「「「いただきます!」」」
 ぼくたちはパンケーキにかぶりついた。
「ああ、なんて美味しいのかしら」花子の顔がとろける。
「こんなにうめえパンケーキってはじめてだよ!」とポンポコサンダーがとびはねる。
「ふう、口の中が幸せでいっぱいだ」とぼくはふたたびため息をついた。
 ダランベリー・ブルーベルベット・トワイトニックソース・パンケーキは超特急のはやさでぼくらの胃袋におさまった。
「ああ、美味しかった。わたしもこんな美味しいパンケーキを作れるようになりたいな。よし、きめたわ」食後のダージリンティーをのみながら、花子がいった。「おじさん、わたしたちをこの店で雇ってくれない? おねがい、どうかわたしたちにパンケーキ制作のいろはを一から十までたたきこんで!」
「「わ、わたしたちぃ!?」」ぼくは馬と声をあわせて叫び、イスからころげ落ちた。
「そうよ。みんなでやった方が楽しいじゃない」と花子はいった。
 ぼくはポンポコサンダーと顔を見合わせてやれやれと首をふりあった。
 ぼくは観念していった。
「いいよ、やろう」
 ポンポコサンダーも覚悟をきめたようだった。
「まったく、しょうがねえなあ」とポンポコサンダーはいった。
「おーけー、じゃあさっそく、明日からビシバシ修行をつけてやる!」といって、でっぷり腹のおじさんはガッハッハッハッハと豪快に笑うのだった。

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