小説

『疑似恋愛』太田純平(『擬似新年』大下宇陀児)

『告白編』

 東京タワーの展望デッキで、二人が夜景を見つめていた。
「おじさま。なんでSTじゃなくてTTなの?」
「ん?」
「なんでスカイツリーじゃなくて東京タワーなの? アタシ、スカイツリーの方が好きなんだけど」
「お世代的に、私は、おスカイツリーじゃなくて、お東京タワーの方がおしっくりくるんだよ」
「ふ~ん」
「今日は、私のおワガママをきいてもらってお悪かった」
「別に。Fだったし」
「おエフ?」
「暇」
「……お佐藤クン」
「アタシ甘味料?」
「お佐藤クン。今日、君をここにお呼んだのはお他でもない。お実は……お実はね……私は……私は君を、お愛してる」
「ア、 ウン。お会いしてるねぇ。毎日のように」
「そ、そうじゃない。だから、お愛してると――」
「ウン。だから会ってるって、毎日」
「ち、違う! 私は! 私はお佐藤クン! 君の事を! お心の底から! お愛してるんだよッ!」
「W」
「おダ、おダブリュ?」
「分かってる」
「!」
「おじさまが何でもかんでも『お』を付けてしまう性格だって事くらい、ずっと前からWだから。アタシもね、おじさまくらいTUじゃないとMRなの」
「と、というと?」
「年上じゃないと無理なの」
「!?」
「アタシもおじさまの事、前からIしてる」

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