よりによって聞きたくない奴の名前が出て来た。品川光司。こいつも中学から一緒だ。同じクラスの頭のいい秀才。常に学年で10番以内に入っている男。ちらっと品川の席を見る。昼休みで昼寝や校庭に遊びに出る者が多いなか、一人で黙々と勉強している。
「マジか・・・。」
つい悲観の声が漏れる。
「怒んないでよ。」
「本当か、それ?」
「本当。だって本人から聞いたんだから。」
目を閉じて深呼吸をする。ショックが大きすぎる。しかし何故好きなのかは聞いておきたい。
「何で好きなの?」
「頭が良くて優しいからだって。」
「ひゃっ!」
両手で顔を覆う。優しいはいいとして、頭が良いは完全に負けている。
「だから諦めた方がいいんじゃない。」
美雪の言葉に思考が停止した。
「・・・ダメだ。何も考えられない。悪いけど、今日はほっといて。」
美雪がその場を離れた。そしてそれからの事は全てが上の空で、午後の授業も受けたのか寝てたのかはっきりしない。
中学生の時から一緒の品川。中学の頃は美雪と品川と自分は仲が良かった。それが高校に入ってからはあまり三人で一緒に遊ばなくなった。原因と言う原因はなく、なんとなく付き合う人間は変わってしまったのだ。仲が悪いわけではないが、それで品川とはなんとなく話さなくなり、品川も無理に話しかけてくることはなかった。
家に帰ってもご飯を食べても風呂に入っても、ショックは消えなった。吉永玲子は品川が好き。理由は頭が良くて優しいから。俺だって優しい。付き合ったら品川より優しく出来る自信がある。ただ・・・ただ頭は自信がない。自分は頭があまり良くない。中学までは品川と一緒に勉強してたのでそこそこ良かったが、高校に入ってからは遊びに夢中になってしまいガンガンに成績が下がっていった。『後悔先に立たず』とはこういう事を言うのかと後悔した。
自分の部屋で横になりながら考える。このまま吉永さんが品川に告白したらどうなってしまうのだろうか。あんなに美人なんだから品川だって断ったりしないだろう。そしたら手も繋ぐだろうし、一緒に帰ったりするだろう。そしてお互い離れるのが嫌で見つめ合ってキスなんかしてしまうんだろうか。
「・・・!!」
自分の妄想に耐え切れず布団をきつく抱きしめる。しかし一度始まった妄想は簡単には止められない。そこから何度も悶絶しながら眠りに落ちた。
「決めた。」
学校の休み時間に美雪に告げた。
「何を。」
「品川に言ってくる。」