「どうする、別れる?」とハナ子はいった。
ぼくは彼女をぶん殴った。かっとなって抑制がきかなかった。
「バカヤロー! なんでそんなことをいうんだ! ぼくはお前のことが大好きなんだぞ! バカヤロー!」
ぼくは夜が明けるまで彼女を殴りつづけた。
「やめて、爆発しちゃう! 爆発しちゃうから、やめて! やめてええ! 爆発するううううううう!」と口ではいいながらも、彼女は抵抗しなかった。
本当は、彼女は最強のトゥルニエ女なのだから、いとも簡単にぼくをねじ伏せられるのだ。だけど彼女はそうしなかった。
そういう女なんだ、ハナ子ってやつは。
いつもエッチの前にぼくをわざと怒らせて、暴力をふるわせる。それはいうならば一種の儀式であり、ウォーミングアップだ。
身も心も炎のように、充分に燃え上がらせたあとで、ぼくたちは肝心のセックスを開始する。世界でいちばん肝心なセックスというやつに取りかかる。
一筋の太陽光線が夜の果てを切り裂いた。
ぼくたちは青白い朝日のスポットライトを浴びながら舞台役者のように、熱狂的に、肉体の快楽に身をまかせた。
どこかで閑古鳥が鳴いていた。
カッコー。
カッコー。
カッコーカッコーカッコー。
いやはやじつに朝だった。