「いや、フッ素入り歯磨き粉チューブ2本分を一気に飲むとフッ素中毒で死ぬって聞いた事があるからさ」と翔太が腕組みしながら言った。
「そんな2本分なんてする訳ないよ! 一日24回だけだって!」
「多すぎるわっ!」と全員一斉にツッコんだ。
「アンタ……一時間一回で歯磨きしてるわけ? いや……寝ないで歯磨きしてるって感じじゃん……」
沙織はこめかみに手をやり滅入った顔だ。
「そんなんじゃ、マウスウオッシュを胃まで綺麗なるから飲んでますってやってたりして」と啓太が苦笑いしながら言った。
「えっ、あれって飲むもんじゃないの!?」と巧巳が驚いた。
「バカじゃないか!? あれエタノールだぞ! アルコールそのものだぞ!」と翔太が叫んだ。
「い、いいじゃないか! 良いと思ってやってるんだ! 飲むのは人の自由じゃないか!」
巧巳は涙目で言い返しながら、何故か消臭剤ボトルのノズル部分をクルクル回しながら外し始める。
「ちょ、ちょっとアンタ何してるのよ……まさか! 頭から被る気じゃないでしょうね!」
「う、うるさいな! それも自由じゃないか!」
「こりゃあ、こいつやっぱ中毒死だな。うん、アルコール中毒で死んだんだ」と啓太が腕組みしながら言った。
「えー! 僕、お酒まったく飲めないのに!」
「巧巳はアル中毒死で決定~」
「そんな~」
そう泣き叫びながら巧巳は頭から消臭剤をドボドボ掛けていた。
「あっバカー! 何やってんのよ~!」
しくしくとまだぐずりながら、すっかり全身フローラルの香りの巧巳。
流石に可愛そうだなと全員が思ったが。
その場を仕切り直す様に啓太が軽く咳払いをする。
「じゃ、じゃあ最後は俺かな……」 そう啓太が言い途中、他の三人が一斉に挙手をして宣言した。
「啓太は転落死で決定~」
「ちょっと待て! 何であっさり決めるんだよ!」と思わず啓太が吠えた。
「いやアンタはそれだって。それしかないって」
沙織が呆れ顔で頬杖つきながら言っていた。
「いや、もうちょっと考えてみようよ! 論議しようよ!」
「啓太君、だって血まみれじゃん。どう見たってそうじゃん。血飛沫、凄いじゃん」
啓太が言い立ててテーブルに飛ばした血飛沫を台布巾で拭きながら巧巳が言っていた。
「そうかも知れんけどさ! 何かこう、複雑なドラマってもんが潜んでいるかもじゃん!」
「啓太は生前からそうじゃないか、大抵無茶して大怪我おって。今回は偶々に死んじゃったんだって」
吠える啓太を横目に翔太は溜息交じりに言っていた。